売上原価を求めてみよう!
1.売上原価について
企業で働いていると所属している部署の会議で「売上原価」って言葉をよく聞くと思います。「売上原価」って言葉の通り、売上に掛かった原価のことなんですが、簿記や会計の学習をしていても「売上原価」の言葉はわかるけど、仕訳や財務諸表やら実務的なことが絡んでくると、「???」に陥りやすい経験がよくありました。そのことから今回は「売上原価」についてスポットを当てて見ていきたいと思います。
「売上原価 とは」とネットで検索すると
商材の売上でかかった仕入原価
と定義されています。仕入原価とは何かというと単純に商材の仕入値のことだと思ってください。
売上原価の計算方法は一般的に
で求められます。
期首在庫棚卸高:月初に抱えている在庫の金額です。
期末在庫棚卸高:月末に抱えている在庫の金額です。
つまり、初めからあった在庫の金額に、増えた在庫の金額を足して、売れ残った在庫の金額を引けば、売れた在庫の金額が出るでしょ、という意味の式です。
図で表すと以下のようになります。
式は眺めていても身に付きにくいので、次の取引例を問題にして売上原価を求めてみましょう!
2.売上原価を求めてみよう。
⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円
①商品Aを50個@100円で仕入
②商品Aを20個@120円で売上
③商品Aを10個@160円で仕入
④商品Aを5個@120円で売上
まず期首在庫棚卸高は⓪からわかりますね。
20個 × 110円 = 2,200円 です。
続いて当月仕入高は①③からわかって
(50個 × 100円) + (10個 × 160円) = 6,600円 です。
そして期末在庫棚卸高は売れ残った在庫が
20 + 50 - 20 + 10 - 5 = 55個
そして在庫単価ですが、下記の月次総平均法を使うと
なので、
となり110円とわかります。
期末在庫棚卸高は
55個 × 110円 = 6050円 となります。
そして売上原価は
2,200円 + 6,600円 - 6050円 = 2750円 となりますね。
3.売上原価を求めてみよう。※運送費付
基本に+αで運送費が発生したときにどうなるか見ていきましょう。
⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円
①商品Aを50個@100円で仕入
②商品Aを20個@120円で売上
③商品Aを10個@160円で仕入
④商品Aを5個@120円で売上
⑤取引①③の仕入時に800円の運送費を支払った。
運送費の扱いについては
にありますように、1.在庫単価に含める場合と2.直接売上原価に計上する場合の2パターンありましたね。
1.在庫単価に含める場合
在庫単価は
となりますね。
よって期末在庫棚卸高は
55個 × 120円 = 6600円 となります。
売上原価は
2,200円 +6600円 + 800円 - 6600円 = 3000円 となります。
2.在庫単価に含めない場合
運送費は全額売上原価にしますので、
2,200円 + 6,600円 - 3850円 + 800円 = 5750円
となります。
売上原価は先ほどの式が一般的な求める方法なのですが、実務となると他にも売上原価に含める取引が発生する可能性があるため、注意してください。
3.売上原価を求めてみよう。※棚卸差異付き
⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円
①商品Aを50個@100円で仕入
②商品Aを20個@120円で売上
③商品Aを10個@160円で仕入
④商品Aを5個@120円で売上
⑤棚卸の結果、商品Aが50個@110円で売れ残った
先の基本問題と何が違うかというと、帳簿上の期末在庫数と棚卸結果の期末在庫数が一致しない点にあります。
帳簿棚卸数(帳簿から計算できる在庫数のこと)は
20個 + 50個 - 20個 + 10個 - 5個 = 55個
でも⑤から実地棚卸数(棚卸業務の結果、実際に残っている在庫数のこと)は50個
よって5個の在庫が盗まれたか破損したか、何らかの理由でなくなっていることになります。このなくなった5個の差は「棚卸減耗損」という勘定科目を使って仕訳されます。
⓪期首在庫棚卸高 2,200/繰越商品 2,200
①仕入 5,000/買掛金 5,000
②売掛金 2,400/売上 2,400
③仕入 1,600/買掛金 1,600
④売掛金 600/売上 600
⑤棚卸減耗損 550/繰越商品 550
⑥繰越商品 5,500/期末在庫棚卸高 5,500
そしてこの棚卸減耗損をどう処理するかがポイントになります。
結論から言うと、棚卸減耗損は発生した金額や理由から、売上原価、販管費、営業外損益のどれかに含められるかが決まります。
売上原価or販管費に含める場合:
反復的に正常な数量で発生したり、企業活動上不可避な費用と捉えられる場合。
営業外損益に含める場合:
異常な原因で、正常数量以上で発生する場合。
※額があまりにも多い場合は特別損失に計上することもあります。
売上原価に含める場合は
2,200円 + 6,600円 + 550円 - 6050円 = 3300円
となります。