減価償却について

 

減価償却

この漢字を見るだけで嫌だという人もいるんじゃないでしょうか?私もその中の一人です。でも減価償却の概念自体はそんなに難しくありません。

文字面に惑わされず、概念と仕訳の方法についてつらつらと説明していきたいと思います。

 

1.減価償却とは?

そもそも減価償却とはどういった概念でしょうか?

ネットで検索してみると、

「資産(家屋・機械など)が、使用するにつれて、財としての価値を減ずるのを費用に計上すること。」

とあります。ネットの説明は穴のない定義なのでわかりにくい傾向がありますが、もう少しかみ砕くと、家屋や機械などの資産は時間の経過につれて、劣化してくため、購入時よりも価格が減少してきますよね?この価値の減少を貸借対照表に反映させる方法が「減価償却」になります。

 

2.減価償却のイメージ

私見ですが、減価償却とは「原価焼却」みたいに思っています。

資産の取得原価を毎年取り崩す(燃やして)費用にする感じですね。

例を仕訳とともに見ていきましょう。

 

例:

2018年にサーバーを50万円現金で購入。劣化により、毎年5万円ずつ価値が減少する。

仕訳:

(2018年)設備機器   50万/現金       50万
(2019年)減価償却費 5万/ 設備機器 5万
(2020年)減価償却費 5万/ 設備機器 5万

 

となります。

2020年の時点で帳簿上のサーバーの価値は50万円から40万円となって価値を減少させています。

 

3.減価償却のイメージと貸借対照表

減価償却で仕訳を起こしていったときの貸借対照表はどうなっていくのか見ていきましょう。

※以下は極端な例で、資本金が400万円、サーバー購入後、何の活動もせずに放置されている会社を思い描きながら見てください。

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となります。設備機器の金額が減ることによって資産が減少します。

また借方の「減価償却費」は損益計算書一般管理費に計上される科目なので、損益は赤字となり、利益剰余金がマイナスで繰り越されていきます。

 

4.償却額の求め方

先の例では毎年5万円償却されていくとしていましたが、簿記の問題ではこの償却費にあたるこの5万円を求めさせられることが多いです。

まずは公式です。

     毎年の償却費= (取得原価 ー 残存価値) ÷ 耐用年数

 

言葉の意味ですが、

取得原価:購入時の金額

耐用年数:減価償却する期間

※耐用年数は国税庁耐用年数表で決められています。

残存価額:償却後も残り続ける資産価値

となります。言葉の意味がわかれば、取得原価ー残存価値が償却する価値の総合計となるため、公式の意味も分かってくるかと思います。

 

5.残存価額についてもう少し

残存価額は償却後も残り続ける資産価値のことを言います。

例を見ていきましょう。

 

例:

サーバー80万円 耐用年数6年 残存価額 8万 とすると毎年の償却費12万円。

 

仕訳:

購入時:設備機器  80万円/現金     80万円
1年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
2年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
3年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
4年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
5年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
6年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円

 

サーバーの耐用年数は6年なので、6年目以降は償却しません。

このとき、設備機器の残高は80-(12×6)=8になりますね。

耐用年数以降、ずっと残り続けるこの8万円のことを残存価額と言ってます。

 

従来、残存価額は取得原価の10%で計算されていましたが、平成19年の税制法の改正により、残存価額の概念がなくなり、耐用年数に到来した資産は簿記上1円の価値しかないとされるようになりました。

 

つまり仕訳で考えると、

例:

サーバー60万円 耐用年数6年 とすると毎年の償却費10万円

 

仕訳:
購入時:設備機器 60万円 /現金   60万円
  1年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  2年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  3年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  4年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  5年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  6年目:償却費  99,999円/設備機器 99,999円

 

最後のラストの年の償却費は設備機器の残高が1円残るように99,999円で記帳します。

 

 6.償却後の売却

償却完了後、簿記上の価値は1円になる資産を1円以上の価格で売却することがあると思います。例えば古本屋にマンガを売っても10円ぐらいにはなりますよね?

償却完了後に1円以上の価格で資産を売却した場合の仕訳は以下のようになります。

 

例:

サーバー60万円 耐用年数6年 とすると毎年の償却費10万円、償却完了後1万円で売却

 

仕訳:

購入時:設備機器 60万円/現金       60万円
 1年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 2年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 3年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 4年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 5年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 6年目:償却費 99,999円/設備機器    99,999円
   売却:現金     1万円/設備機器        1円
                固定資産売却益 99,999円

となります。設備機器の残高1円を現金1万円に振り替えて、残りの99,999円が固定資産売却益という勘定科目で処理します。

 

 7.減価償却の記帳法~直接法と間接法~

減価償却の記帳方法は直接法と間接法の2種類あります。

これまでの例にあった仕訳は直接法による仕訳です。購入した「設備機器」科目の残高を「償却費」で直接減らしていく方法です。

直接法は直観的で理解しやすいのですが、多くの企業では間接法が採用されていると聞いた覚えがあるので、ご紹介していきたいと思います。

 

8.間接法による減価償却仕訳

間接法による減価償却の仕訳は直接法とは違い、資産科目(設備機器)を減らすのではなく、減価償却累計額という勘定科目を使い、貸借対照表上で合計することで、資産価値を減少させる方法です。

仕訳例を見ていきましょう。

 

例:

サーバー60万円 耐用年数6年 毎年の償却費10万円

 

仕訳:
購入時:設備機器 60万円/現金      60万円
  1年目:償却費  10万円/減価償却累計額 10万円
  2年目:償却費  10万円/減価償却累計額 10万円
  3年目:償却費  10万円/減価償却累計額 10万円

 

となります。

直接法とは違い、償却費の貸方が設備機器ではなく、減価償却累計額という科目で処理されています。このままだと設備機器の残高は60万円のままだと思うかもしれませんが、決算では貸借対照表上の数字が合えばOKなので、設備機器の残高と減価償却累計額の残高を合算して資産の価値を減少させることとなります。

 

ちなみに貸借対照表は下記の通りとなります。

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9.何がうれしい?直接法と間接法

減価償却の記帳方法を2つご紹介しましたが、それぞれメリット・デメリットがあります。

 

直接法は記帳方法は単純でわかりやすいのですが、資産科目の残高≠取得原価のため、取得原価がわかりにくくなってしまいます。

また間接法は記帳方法がわかりにくいのですが、資産科目の残高=取得原価のため、取得原価がわかりやすいのです。

 

おそらく、帳簿を見てわかりやすい方が企業にとってはうれしいので間接法が採用されていることが多いのだと思います。

 

10.まとめ

減価償却について説明をしていきましたがいかがでしょうか?

1回読んだだけでは理解しづらいかもしれませんが、この記事を参考に理解が深まることがあれば幸いです。まずは減価償却の概念だけでも感覚的にわかるようになることを目指してください。その後の知識は後からついてくるはずです。