社内取引と未実現利益

 

 今回は社内売買と未実現利益について書きます!!!

簿記で言うと本支店会計、連結決算の会計処理にあたります。

親会社と子会社の連結決算を例にして解説しているサイトが多いですが、当ブログでは1企業内の部署間の取引(社内売買)に置き換えて、お話していきたいと思います。

 

社内売買についてお話する前に、まずは社内売買の前提となる概念である財務会計管理会計についてさらっと触れたいと思います。

 

1.財務会計管理会計

この言葉、聞いたことがあるでしょうか?

このブログを読んでくださっている方の中には恐らく、「聞いたことはあるがいまいち意味がわかっていない」という人が多いのではないでしょうか?

私もこの言葉を説明しろと言われたらちょっと戸惑うのですが、簡単に言うと、

 

財務会計⇒外部公開用の会計

管理会計⇒内部用の会計

 

という感じになります。

 

固い言葉で言うならば

 

財務会計⇒外部に対して経営状況の公開を目的とした会計の概念

管理会計⇒外部に対して公開はしないが、会社の経営分析に役立てる目的で行う会計の概念

 

となります。

どうでしょうか?ピンときますか?

要は財務会計財務省表などの公開する資料の作成を目的とした会計で、管理会計は会社内部用の資料作成を目的とした会計、と今回のところは認識しておいて頂いていいと思います。

 

もう少し具体的には

財務会計概念よりなもの:

貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書・・・等。

 

管理会計概念よりなもの:

部門別損益計算書原価計算、変動損益計算、経営分析、予算管理・予実管理・・・等。

 

といった具合です。

 

今回お伝えする社内売買の概念は、部門別の損益を出し、業績の良い部門、悪い部門を分析するためのものになるため、管理会計よりのものになります。

 

前置きが長くなりましたが、実際に社内売買とその仕訳、そして部門別損益について具体的に見ていきましょう!

 

2.社内売買の仕訳

0.製造部門Aは製品Xを50個@200円で製造した。

1.営業部門Bは製品Xを製造部門Aから20個@250円で買い取った。

 

仕訳は以下の通りになります。

 

1.社内売買 5,000 / 社内売上 5,000(A)

  社内仕入 5,000 / 社内売買 5,000(B)

※社内売買という勘定科目は実際には社内売掛金や社内買掛金という勘定科目で表現されることが多いですが、後で相殺されるため、今回は社内売買でまとめています。

 

ここからさらに、営業部門Bが得意先に売上した場合を考えてみましょう。

 

0.製造部門Aは製品Xを50個@200円で製造した。

1.営業部門Bは製品Xを製造部門Aから20個@250円で買い取った。

2.営業部門Bは製品Xを得意先へ20個@300円で売った。

 

仕訳は以下の通りになります。

 

1.社内売買 5,000 / 社内売上 5,000(A)

  社内仕入 5,000 / 社内売買 5,000(B)

2.売掛金  6,000 / 売上   6,000(B)

 

さてこのとき、部門別の損益計算書は以下になります。

 

f:id:hvblog:20181203211308p:plain
f:id:hvblog:20181203211318p:plain

A部門はB部門への社内売上5000に対し、その原価は4000なので、粗利は1000。
B部門は得意先への売上6000に対し、その原価はA部門から仕入で5000なので、粗利は1000。

会社全体で見れば、要は@200円で製造したものを300円で20個売ったので粗利は2000円で部門別の粗利の合計となりますね。

 

会社全体の損益計算書ですが、このまま各部門の損益計算書の科目の合計としてしまうと売上は11,000円となってしまいます。ですが、実際は得意先への売上が会社の売上なので、このままではいけません。

というわけで、決算処理前には以下の仕訳をして内部取引の仕訳を相殺して0にしてしまいます。

 

社内売上 5,000 / 社内仕入 5,000

 

そうすると、会社の損益計算書

f:id:hvblog:20181203212327p:plain

 

となるわけです。

 

続いては「未実現利益」について解説します。

 

3.社内売買と未実現利益

先とは少し変わり、営業部門Bが製造部門Aから仕入した在庫が残ったまま決算期を迎えた場合を考えてみます。

 

0.製造部門Aは製品Xを50個@200円で製造した。

1.営業部門Bは製品Xを製造部門Aから20個@250円で買い取った。

2.営業部門Bは製品Xを得意先へ15個@300円で売った。

 

仕訳は以下のようになります。

 

1.社内売買 5,000 / 社内売上 5,000(A)

  社内仕入 5,000 / 社内売買 5,000(B)

2.売掛金  4,500 / 売上   4,500(B)


さて、このときの部門別損益は以下の通りです。

 

f:id:hvblog:20181203213052p:plain
f:id:hvblog:20181203213104p:plain


さて先ほどと同様に社内売上、仕入を相殺して会社全体の損益を出してみましょう。

 

社内売上 5,000 / 社内仕入 5,000

 

そうすると、会社の損益計算書

f:id:hvblog:20181203213236p:plain

となります。

ですが、、、、実はこの損益計算書にはおかしなところがあります。

今回、@200円で製造したXを@300円で15個売上したので、粗利は1,500円となるはずですが、損益計算書では1,750円と250円の余分な利益が出てしまっています。

この250円はどこから湧いて出てきたのでしょうか?

 

それは営業部Bが仕入して残った期末在庫5個分に対して、製造部AがBに売上した1個当たりの粗利@50円から来ています。

つまり、

製造部A⇒営業部Bへの売上の粗利は@50円×20個=1000円

営業部B⇒得意先への売上の粗利は@50円×15個=1500円

ですが、この損益計算書では営業部Bが持つ、残った在庫5個分の粗利も含めてしまっているのです。

先の例のようにすべて売れてしまえば何の問題もないのですが、社内取引で利益をのっけて取引を行うと売れてもいないのに利益が出てしまっているように見えてしまうのです。

この売れてもないのに利益に見える、架空の利益をまだ実現していない利益という意味で未実現利益と言います。

会社全体の損益計算書ではこの未実現利益分を修正する必要があります。

では未実現利益の仕訳を行い、正しい損益計算書に直しましょう。

 

期末製品棚卸高 250/繰越製品250

 

と仕訳をして、余分な利益を打ち消します。

そして会社全体の損益計算書

f:id:hvblog:20181203214613p:plain

となります。

粗利も一致していますね。

 

4.最後に

よく他の解説サイトでは最後の

期末製品棚卸高 250/繰越製品250 を

売上原価 250/商品 250 として説明されていることが多いです。

ですが、どちらも同じ意味になるので混乱しないように注意が必要です。

後、これは私見ですが、この未実現利益分の仕訳を勘定科目で表現してもいいのかなって思うので、

未実現利益控除額 250/繰越製品 250

とした方がわかりやすいんじゃないかなって思っていますが、実際の実務でどうやって処理されているのかわからないので、そこは個人的な課題だと思っています。

 

いかがでしょうか?

仕訳と損益計算書を合わせてみればそこまで難しい内容ではないかと思います。

少しでも簿記に抵抗のある人の手助けになれば幸いです!