社内取引と未実現利益

 

 今回は社内売買と未実現利益について書きます!!!

簿記で言うと本支店会計、連結決算の会計処理にあたります。

親会社と子会社の連結決算を例にして解説しているサイトが多いですが、当ブログでは1企業内の部署間の取引(社内売買)に置き換えて、お話していきたいと思います。

 

社内売買についてお話する前に、まずは社内売買の前提となる概念である財務会計管理会計についてさらっと触れたいと思います。

 

1.財務会計管理会計

この言葉、聞いたことがあるでしょうか?

このブログを読んでくださっている方の中には恐らく、「聞いたことはあるがいまいち意味がわかっていない」という人が多いのではないでしょうか?

私もこの言葉を説明しろと言われたらちょっと戸惑うのですが、簡単に言うと、

 

財務会計⇒外部公開用の会計

管理会計⇒内部用の会計

 

という感じになります。

 

固い言葉で言うならば

 

財務会計⇒外部に対して経営状況の公開を目的とした会計の概念

管理会計⇒外部に対して公開はしないが、会社の経営分析に役立てる目的で行う会計の概念

 

となります。

どうでしょうか?ピンときますか?

要は財務会計財務省表などの公開する資料の作成を目的とした会計で、管理会計は会社内部用の資料作成を目的とした会計、と今回のところは認識しておいて頂いていいと思います。

 

もう少し具体的には

財務会計概念よりなもの:

貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書・・・等。

 

管理会計概念よりなもの:

部門別損益計算書原価計算、変動損益計算、経営分析、予算管理・予実管理・・・等。

 

といった具合です。

 

今回お伝えする社内売買の概念は、部門別の損益を出し、業績の良い部門、悪い部門を分析するためのものになるため、管理会計よりのものになります。

 

前置きが長くなりましたが、実際に社内売買とその仕訳、そして部門別損益について具体的に見ていきましょう!

 

2.社内売買の仕訳

0.製造部門Aは製品Xを50個@200円で製造した。

1.営業部門Bは製品Xを製造部門Aから20個@250円で買い取った。

 

仕訳は以下の通りになります。

 

1.社内売買 5,000 / 社内売上 5,000(A)

  社内仕入 5,000 / 社内売買 5,000(B)

※社内売買という勘定科目は実際には社内売掛金や社内買掛金という勘定科目で表現されることが多いですが、後で相殺されるため、今回は社内売買でまとめています。

 

ここからさらに、営業部門Bが得意先に売上した場合を考えてみましょう。

 

0.製造部門Aは製品Xを50個@200円で製造した。

1.営業部門Bは製品Xを製造部門Aから20個@250円で買い取った。

2.営業部門Bは製品Xを得意先へ20個@300円で売った。

 

仕訳は以下の通りになります。

 

1.社内売買 5,000 / 社内売上 5,000(A)

  社内仕入 5,000 / 社内売買 5,000(B)

2.売掛金  6,000 / 売上   6,000(B)

 

さてこのとき、部門別の損益計算書は以下になります。

 

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A部門はB部門への社内売上5000に対し、その原価は4000なので、粗利は1000。
B部門は得意先への売上6000に対し、その原価はA部門から仕入で5000なので、粗利は1000。

会社全体で見れば、要は@200円で製造したものを300円で20個売ったので粗利は2000円で部門別の粗利の合計となりますね。

 

会社全体の損益計算書ですが、このまま各部門の損益計算書の科目の合計としてしまうと売上は11,000円となってしまいます。ですが、実際は得意先への売上が会社の売上なので、このままではいけません。

というわけで、決算処理前には以下の仕訳をして内部取引の仕訳を相殺して0にしてしまいます。

 

社内売上 5,000 / 社内仕入 5,000

 

そうすると、会社の損益計算書

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となるわけです。

 

続いては「未実現利益」について解説します。

 

3.社内売買と未実現利益

先とは少し変わり、営業部門Bが製造部門Aから仕入した在庫が残ったまま決算期を迎えた場合を考えてみます。

 

0.製造部門Aは製品Xを50個@200円で製造した。

1.営業部門Bは製品Xを製造部門Aから20個@250円で買い取った。

2.営業部門Bは製品Xを得意先へ15個@300円で売った。

 

仕訳は以下のようになります。

 

1.社内売買 5,000 / 社内売上 5,000(A)

  社内仕入 5,000 / 社内売買 5,000(B)

2.売掛金  4,500 / 売上   4,500(B)


さて、このときの部門別損益は以下の通りです。

 

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さて先ほどと同様に社内売上、仕入を相殺して会社全体の損益を出してみましょう。

 

社内売上 5,000 / 社内仕入 5,000

 

そうすると、会社の損益計算書

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となります。

ですが、、、、実はこの損益計算書にはおかしなところがあります。

今回、@200円で製造したXを@300円で15個売上したので、粗利は1,500円となるはずですが、損益計算書では1,750円と250円の余分な利益が出てしまっています。

この250円はどこから湧いて出てきたのでしょうか?

 

それは営業部Bが仕入して残った期末在庫5個分に対して、製造部AがBに売上した1個当たりの粗利@50円から来ています。

つまり、

製造部A⇒営業部Bへの売上の粗利は@50円×20個=1000円

営業部B⇒得意先への売上の粗利は@50円×15個=1500円

ですが、この損益計算書では営業部Bが持つ、残った在庫5個分の粗利も含めてしまっているのです。

先の例のようにすべて売れてしまえば何の問題もないのですが、社内取引で利益をのっけて取引を行うと売れてもいないのに利益が出てしまっているように見えてしまうのです。

この売れてもないのに利益に見える、架空の利益をまだ実現していない利益という意味で未実現利益と言います。

会社全体の損益計算書ではこの未実現利益分を修正する必要があります。

では未実現利益の仕訳を行い、正しい損益計算書に直しましょう。

 

期末製品棚卸高 250/繰越製品250

 

と仕訳をして、余分な利益を打ち消します。

そして会社全体の損益計算書

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となります。

粗利も一致していますね。

 

4.最後に

よく他の解説サイトでは最後の

期末製品棚卸高 250/繰越製品250 を

売上原価 250/商品 250 として説明されていることが多いです。

ですが、どちらも同じ意味になるので混乱しないように注意が必要です。

後、これは私見ですが、この未実現利益分の仕訳を勘定科目で表現してもいいのかなって思うので、

未実現利益控除額 250/繰越製品 250

とした方がわかりやすいんじゃないかなって思っていますが、実際の実務でどうやって処理されているのかわからないので、そこは個人的な課題だと思っています。

 

いかがでしょうか?

仕訳と損益計算書を合わせてみればそこまで難しい内容ではないかと思います。

少しでも簿記に抵抗のある人の手助けになれば幸いです!


 

 

貸倒の仕訳について

 

今回は簿記3級の一項目である「貸倒」について書きます。

よく黒字なのに倒産とか耳にするかと思いますが、関連することなので知っておいた方がいいでしょう。 

1.貸倒とは?

そもそも貸倒とはどういった概念でしょうか?

ネットで検索してみると、

売掛金や貸付金などの債権が、倒産などの理由で回収できず損失となること。またはその損失の金額のことを指す。」

とあります。これはwikipediaの説明です。会計に精通している人はわかるんでしょうが、私のような小難しい言葉が並ぶと脳が拒否反応する方には少しとっつきにくいかと思います。

 

簡単に言うと、

「もらえるはずだったお金が、取引先が倒産したせいでもらえなくなってしまったこと」を貸倒と言います。

B to C(企業対個人消費者)の取引ならば、物を買ったらその場でお金を支払いますが、B to B(企業対企業)の場合は物を買ってから支払うまでに期間があります。

通常、企業間の取引では取引先ごとに支払いルールが設けられています。

支払いのルールとは「15日締 当月末支払い」と言った締日と支払日が決められているようなものです。同じ取引先と1カ月の間に何度も取引をする場合、その都度お金を支払うとなると手間なので、締日までに発生した取引金額をまとめて支払日に払う、といったように1度で済むように効率化されているのです。(注意:企業によっては都度支払いの場合もあります。)

 そのため、物を売ってからお金が入ってくるまでの間に取引先が倒産してしまうとお金がもらえなくなり、「貸倒」となります。

2.貸倒の会計処理

 

貸倒の会計処理とは、取引先の倒産リスクを見込んで予め貸倒されるであろう金額を財務諸表に反映させておくことを指します。

 

それでは、貸倒の仕訳が財務諸表にどう反映されるのか見ていきましょう!!!

 

3.貸倒引当金の仕訳①

1.取引先Xが倒産するうわさを聞いたため、売掛金残高の10%を貸倒引当金として準備することにした。

※このとき、売掛金残高は5,000,000円あるとする。

 

企業が持っている売掛金の一部が貸倒されるかもしれないため、次のような仕訳をします。

 

1.貸倒引当繰入 500,000 / 貸倒引当金 500,000

 

この仕訳を見たとき、「え?売掛金が減るかもしれないんだから、貸方は売掛金なのでは?」と思われる方がいるかもしれません。※私も思っていました。

ですが、売掛金ではなく貸倒引当金という資産科目で仕訳を起こします。

実際はまだ貸し倒れていないため、売掛金ではないのです。

 

このとき、貸借対照表損益計算書は次のようになります。

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貸倒引当金は資産科目、貸倒繰入金は費用科目ですので、貸借対処表と損益計算書にそれぞれ計上されます。

 

続いて、実際取引先が倒産した場合の仕訳を見ていきましょう。

 

4.貸倒引当金の仕訳②

1.取引先Xが倒産するうわさを聞いたため、売掛金残高の10%を貸倒引当金として準備することにした。

※このとき、売掛金残高は5,000,000円あるとする。

2.取引先Xが倒産したため、売掛金の一部である300,000円が貸し倒れた。

 

予め見積もっていた損失が実際に起こった際、次の仕訳をします。

 

1.貸倒引当繰入 500,000 / 貸倒引当金 500,000

2.貸倒引当金  300,000 / 売掛金   300,000

 

このとき貸借対照表損益計算書

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となります。1の仕訳で予め損益計算書に倒産リスクを盛り込んでおき、盛り込んだリスクを実際の貸倒額と相殺するようなイメージです。

続いて、見込んでいた損失よりも大きいケースの例を見ていきます。

 

4.貸倒損失の仕訳

1.取引先Xが倒産するうわさを聞いたため、売掛金残高の10%を貸倒引当金として準備することにした。

※このとき、売掛金残高は5,000,000円あるとする。

2.取引先Xが倒産したため、売掛金の一部である600,000円が貸し倒れた。

 

予め見積もっていた損失よりも大きな損失が実際に起こった際、次の仕訳をします。

 

1.貸倒引当繰入 500,000 / 貸倒引当金 500,000

2.貸倒引当金  500,000 / 売掛金   600,000

  貸倒損失   100,000

 

貸倒損失という科目を使って不足分の100,000を仕訳します。

このときの財務諸表と損益計算賞は次の通りです。

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貸倒引当金が全額なくなり、そして売掛金が600,000減ります。

また、超過分の貸倒損失は場合によりますが、特別損失として計上しています。

 

5.貸倒引当金戻入の仕訳

「貸倒引当金戻入」は「かしだおれひきあてきんもどしいれ」と読みます。

これは予め見込んでおいたリスクが思ったより少なかった場合に、貸倒引当金をもとに戻す処理のイメージになります。

 

1.取引先Xが倒産するうわさを聞いたため、売掛金残高の10%を貸倒引当金として準備することにした。

※このとき、売掛金残高は5,000,000円あるとする。

2.取引先Xが倒産したため、売掛金の一部である300,000円が貸し倒れた。

3.取引先の倒産リスクが少なくなったため、売掛金残高の1%を貸倒引当金として準備しなおすことにした。

※このとき、売掛金残高は4,700,000円あるとする。

 

1.貸倒引当繰入 500,000 / 貸倒引当金  500,000

2.貸倒引当金  300,000 / 売掛金    300,000

3.貸倒引当金  153,000 / 貸倒引当戻入 153,000

※153,000=200,000 - 47,000(貸倒引当金残高ー売掛金残高×0.01)です。

 

貸借対照表損益計算書は・・・・

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 となります。

 

6.貸倒関連の科目について

今回は貸倒繰入金、貸倒引当金戻入を一般管理費、貸倒損失を特別損失として処理していますが、取引内容やその額によっては別の科目区分で表示することもあるそうです。

詳しくは下記URLをご参考ください。

 

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/sme17-2.pdf

中小企業の会計に関する指針(平成 24 年版)

 

7.まとめ

いかがでしょうか?

仕訳だけではいまいちわかりにくいかもしれませんが、財務諸表にどう反映されるのかまで理解すると、少しは覚えやすくなるかと思います。

今回の記事でみなさんの理解度が深まれば幸いです。

減価償却について

 

減価償却

この漢字を見るだけで嫌だという人もいるんじゃないでしょうか?私もその中の一人です。でも減価償却の概念自体はそんなに難しくありません。

文字面に惑わされず、概念と仕訳の方法についてつらつらと説明していきたいと思います。

 

1.減価償却とは?

そもそも減価償却とはどういった概念でしょうか?

ネットで検索してみると、

「資産(家屋・機械など)が、使用するにつれて、財としての価値を減ずるのを費用に計上すること。」

とあります。ネットの説明は穴のない定義なのでわかりにくい傾向がありますが、もう少しかみ砕くと、家屋や機械などの資産は時間の経過につれて、劣化してくため、購入時よりも価格が減少してきますよね?この価値の減少を貸借対照表に反映させる方法が「減価償却」になります。

 

2.減価償却のイメージ

私見ですが、減価償却とは「原価焼却」みたいに思っています。

資産の取得原価を毎年取り崩す(燃やして)費用にする感じですね。

例を仕訳とともに見ていきましょう。

 

例:

2018年にサーバーを50万円現金で購入。劣化により、毎年5万円ずつ価値が減少する。

仕訳:

(2018年)設備機器   50万/現金       50万
(2019年)減価償却費 5万/ 設備機器 5万
(2020年)減価償却費 5万/ 設備機器 5万

 

となります。

2020年の時点で帳簿上のサーバーの価値は50万円から40万円となって価値を減少させています。

 

3.減価償却のイメージと貸借対照表

減価償却で仕訳を起こしていったときの貸借対照表はどうなっていくのか見ていきましょう。

※以下は極端な例で、資本金が400万円、サーバー購入後、何の活動もせずに放置されている会社を思い描きながら見てください。

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となります。設備機器の金額が減ることによって資産が減少します。

また借方の「減価償却費」は損益計算書一般管理費に計上される科目なので、損益は赤字となり、利益剰余金がマイナスで繰り越されていきます。

 

4.償却額の求め方

先の例では毎年5万円償却されていくとしていましたが、簿記の問題ではこの償却費にあたるこの5万円を求めさせられることが多いです。

まずは公式です。

     毎年の償却費= (取得原価 ー 残存価値) ÷ 耐用年数

 

言葉の意味ですが、

取得原価:購入時の金額

耐用年数:減価償却する期間

※耐用年数は国税庁耐用年数表で決められています。

残存価額:償却後も残り続ける資産価値

となります。言葉の意味がわかれば、取得原価ー残存価値が償却する価値の総合計となるため、公式の意味も分かってくるかと思います。

 

5.残存価額についてもう少し

残存価額は償却後も残り続ける資産価値のことを言います。

例を見ていきましょう。

 

例:

サーバー80万円 耐用年数6年 残存価額 8万 とすると毎年の償却費12万円。

 

仕訳:

購入時:設備機器  80万円/現金     80万円
1年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
2年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
3年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
4年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
5年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円
6年目:  償却費  12万円/設備機器 12万円

 

サーバーの耐用年数は6年なので、6年目以降は償却しません。

このとき、設備機器の残高は80-(12×6)=8になりますね。

耐用年数以降、ずっと残り続けるこの8万円のことを残存価額と言ってます。

 

従来、残存価額は取得原価の10%で計算されていましたが、平成19年の税制法の改正により、残存価額の概念がなくなり、耐用年数に到来した資産は簿記上1円の価値しかないとされるようになりました。

 

つまり仕訳で考えると、

例:

サーバー60万円 耐用年数6年 とすると毎年の償却費10万円

 

仕訳:
購入時:設備機器 60万円 /現金   60万円
  1年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  2年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  3年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  4年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  5年目:償却費  10万円 /設備機器 10万円
  6年目:償却費  99,999円/設備機器 99,999円

 

最後のラストの年の償却費は設備機器の残高が1円残るように99,999円で記帳します。

 

 6.償却後の売却

償却完了後、簿記上の価値は1円になる資産を1円以上の価格で売却することがあると思います。例えば古本屋にマンガを売っても10円ぐらいにはなりますよね?

償却完了後に1円以上の価格で資産を売却した場合の仕訳は以下のようになります。

 

例:

サーバー60万円 耐用年数6年 とすると毎年の償却費10万円、償却完了後1万円で売却

 

仕訳:

購入時:設備機器 60万円/現金       60万円
 1年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 2年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 3年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 4年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 5年目:償却費  10万円/設備機器     10万円
 6年目:償却費 99,999円/設備機器    99,999円
   売却:現金     1万円/設備機器        1円
                固定資産売却益 99,999円

となります。設備機器の残高1円を現金1万円に振り替えて、残りの99,999円が固定資産売却益という勘定科目で処理します。

 

 7.減価償却の記帳法~直接法と間接法~

減価償却の記帳方法は直接法と間接法の2種類あります。

これまでの例にあった仕訳は直接法による仕訳です。購入した「設備機器」科目の残高を「償却費」で直接減らしていく方法です。

直接法は直観的で理解しやすいのですが、多くの企業では間接法が採用されていると聞いた覚えがあるので、ご紹介していきたいと思います。

 

8.間接法による減価償却仕訳

間接法による減価償却の仕訳は直接法とは違い、資産科目(設備機器)を減らすのではなく、減価償却累計額という勘定科目を使い、貸借対照表上で合計することで、資産価値を減少させる方法です。

仕訳例を見ていきましょう。

 

例:

サーバー60万円 耐用年数6年 毎年の償却費10万円

 

仕訳:
購入時:設備機器 60万円/現金      60万円
  1年目:償却費  10万円/減価償却累計額 10万円
  2年目:償却費  10万円/減価償却累計額 10万円
  3年目:償却費  10万円/減価償却累計額 10万円

 

となります。

直接法とは違い、償却費の貸方が設備機器ではなく、減価償却累計額という科目で処理されています。このままだと設備機器の残高は60万円のままだと思うかもしれませんが、決算では貸借対照表上の数字が合えばOKなので、設備機器の残高と減価償却累計額の残高を合算して資産の価値を減少させることとなります。

 

ちなみに貸借対照表は下記の通りとなります。

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9.何がうれしい?直接法と間接法

減価償却の記帳方法を2つご紹介しましたが、それぞれメリット・デメリットがあります。

 

直接法は記帳方法は単純でわかりやすいのですが、資産科目の残高≠取得原価のため、取得原価がわかりにくくなってしまいます。

また間接法は記帳方法がわかりにくいのですが、資産科目の残高=取得原価のため、取得原価がわかりやすいのです。

 

おそらく、帳簿を見てわかりやすい方が企業にとってはうれしいので間接法が採用されていることが多いのだと思います。

 

10.まとめ

減価償却について説明をしていきましたがいかがでしょうか?

1回読んだだけでは理解しづらいかもしれませんが、この記事を参考に理解が深まることがあれば幸いです。まずは減価償却の概念だけでも感覚的にわかるようになることを目指してください。その後の知識は後からついてくるはずです。

資本金ってなに?

 

会社の設立時に必要となるのが資本金です。

この記事では資本金ってなに?っていう素朴な疑問に簡単にお答えしていきたいと思います。

 

1.資本金とは

ネットの説明だと

その会社の株主が事業を円滑に進められるように出資した金額(株式の総金額)のこと。

と記載されています。多分資本金の定義なので、穴がないような説明をするとこうなるうんでしょうね。

もっと簡単に言うと 創業時の元手となるお金のことを資本金といいます。

 

2.「起業は1円から可能」はうそ。

最近は最低資本金制度が廃止され、1円からでも起業は可能となりました。可能というのは会社の登記は可能ということです。つまり、会社自体は1円から作れるということ。 でも、元手が1円では何も買えないし支払もできませんよね? オフィスを借りるもんなら賃料が必要ですし、自宅兼オフィスでも光熱費はかかります。元手が1円ではこういった諸経費も払えないですよね。

だから現実的に1円で企業するなんて不可能なんです。

「1円から起業できる」と聞くと知識がないとじゃあ資本金って一体何に使われるの?という疑問を持ってしまい、余計に難しくしている気がしています。

 

3.トヨタの資本金

トヨタの資本金はいくらか知っていますか?

トヨタのWEBサイトでも公開されていますが、6,354億円とあります。

資本金は創業時の元手となるお金といいましたが、創業者の豊田 喜一郎(とよだ きいちろう)さんは最初からこんな大金をもっていたのでしょうか?

 

4.会社の資本金

そんなことはありません(多分)。

創業当時からそんな大金を所持しているなんて考えにくいですよね。

資本金は創業してからも「増資」されることで増やすことができるのです。

トヨタのWEBサイトには「6,354億円(2016年3月末現在)」と日付がありますように、増資によって増やした結果「6,354億円」まで増えたということです。

※ちなみにトヨタのWEBサイトには資本金増資の遷移も公開されています。一目見てみてください。

 

5.増資の方法

資本金を増やすことを「増資」といいます。

最近の日曜TVドラマ「下町ロケット」でも佃製作所が窮地に陥った会社に「出資」するという場面がありました。「出資」された会社は資本金が増えることになります。

 

増資の方法は3つあります。

①公募増資

 株式を新しく発行して、投資家たちに株を買ってもらうように勧誘すること

②株主割当増資
 新しく発行した株を既存の株主にだけ買ってもらうように勧誘すること

③第三者割当増資
 新株を発行する会社の親会社や取引先など、関連する「第三者」に対して買ってもらうこと

 

佃製作所が行った「出資」は③にあたります。

①~③の説明は出資された側からの説明なので、佃製作所が自ら進んで出資した場面を想像するとあまりピンとこないかもしれませんが、された側からの目線で考えるようにしてください。

 

出資を受けた会社は株式を発行して出資者は株主となります。出資先の業績が良いと出資者は配当金などの恩恵を受けることができますが、出資は融資と違って返済義務がありませんので、業績が悪いと最悪多額の損失になることもあるので出資先は慎重に選ぶ必要があります。

実際、佃製作所もかなり迷っていたのはこういうことだからです。

 

6.最後に

簿記と資本金を結び付けて終わりたいと思います。

会社創業時、手持ちのお金500万を会社の資本金とした場合、資本金の仕訳は

現金 500万円/資本金 500万円

となります。

 

また貸借対照表では純資産の部に計上されます。

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資本金の概要はこんな感じです。簿記3級レベルならあまり取り上げられることはないでしょうが、知っていて損はないので、頭の片隅においておいてもらえれると幸いです! 

 

在庫評価方法について

 

1.在庫評価方法とは

企業の商品在庫を資産としてお金に換算する方法のことを指します。

通常、企業は決算日に棚卸を行い、抱えている在庫数と「在庫評価方法」によって計算された商品1個当たりの単価をかけて金額を算出します。

 

つまり、「在庫評価方法」とは在庫1個当たりの単価を算出する方法です。

在庫評価方法は7種類あります。以下の図は評価方法の全体像です。

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企業はいずれかの評価方法を使って在庫金額を計算しています。

一般的には「最終原価仕入法」が適用されますが、届け出を税務署に提出すれば他の評価方法に変更することが可能です。企業は自社の扱う商材価値を適切に計算できる評価方法を選択して在庫金額を計算します。

※評価方法変更の届出

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評価方法が変わると、在庫単価も変わります。

そもそも評価方法が7つもあるのは資産価値を適切に図るためですが、企業は「業務負荷が軽くなる(なるべく計算が簡単)」かつ「税務署に怒られない」方法で在庫評価を行います。どうして税務署が絡んでくるかというと、評価方法を決めることは売上原価を決めることにもなるため、最終的には利益が変わるためです。

税金は利益から徴収されますので、税務署は適切な在庫評価が行われているか目を光らせているのです。

 

では、それぞれの在庫評価方法がどんなものなのか順番に見ていきましょう。

 

2.最終原価仕入

 決算日に最も近い日に取得した仕入単価を在庫単価にする方法です。

計算方法がとても簡単だというメリットがありますが、在庫の取得単価にばらつきがある場合、最後に取得した仕入単価を採用するため、他の仕入単価との差が出てくるというデメリットがあります。

以下の取引例において、最終原価仕入法による在庫単価は160円となります。

 

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを  5個@120円で売上

 

3.個別法

取得原価の異なる在庫を区別して記録し、その個々の仕入原価によって在庫単価を決める方法です。宝石や芸術品などの1点ものの商材等の在庫単価を決めるのに適切な方法です。

 

ピカソの絵を1個5,000万円で仕入

ゴッホの絵を1個1億円で仕入

ラッセンの絵を1個8,000万円で仕入

ゴッホの絵を1個1億2,000万円で売上

 

上記の取引例の場合、在庫単価はそれぞれ

 

ピカソの絵:@5,000万円

ゴッホの絵:@1億円

ラッセンの絵:@8,000万円

 

となります。

 

4.先入先出法

仕入した日付の古い順に払出されていく考え方に基づいて評価する方法です。

以下の取引例で説明します。

 

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを30個@110円で仕入

③商品Aを40個@120円で売上

④商品Aを25個@130円で売上

⑤商品Aを10個@120円で仕入

※時系列順に並んでいると思ってください。

 

ポイントはどの単価で仕入した商品が出ていったか、を仕入した順番で決めていきます。

③で40個売り上げていますので、①で仕入した50個@100円の在庫は残り10個@100円として考えます。

続いて④で25個売り上げていますので①で仕入した残在庫10個@100円がまず出ていき、残り15個は②で仕入した30個@110円の在庫から引きますので、残った在庫は15個@110円となります。

期末在庫の金額は 15個×110円 + 10個×120円 = 2,850円 と計算されます。

 

5.月次総平均法

期首在庫金額と当月仕入高を在庫数量で平均して計算する方法です。

言葉より、式と例を見た方がわかりやすいです。

 

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【取引例】

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを30個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを50個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上 

 

上記の取引例に月次総平均法で求めると

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在庫単価は132円となります。

期末の在庫金額は売れ残りが80個あるので

80個 × 132円 = 10,560円 となります。

 

6.移動平均

移動平均法は仕入の都度、平均単価を計算して在庫単価とする方法です。

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【取引例】

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを30個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを50個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上 

 

仕入の都度平均単価を計算するため、この例では①③のときに求めることになります。

①の仕入で在庫単価は104円です。

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③の仕入で在庫単価は139円

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※30個×104円の30個は③の時点での在庫数になります。

 

期末の在庫金額は売れ残りが75個あるので

75個 × 139円 = 10,425円 となります。

 

※補足ですが、月次総平均の場合、月末在庫単価は132円となります。

7.売上原価還元法

原価率を先に計算して、商品の売価から評価する方法です。

これだけ聞いてもわからないと思いますので、具体的に計算していきます。

まず計算方法をざっくりというと、以下になります。

 

①期末在庫の売価を決めます。

②原価率を求めます。

③原価率から在庫単価を求めます。

 

では下記の取引例で①~③まで順番にやっていきましょう。

 

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上

⑤棚卸の結果、商品Aが55個@?円 

 

①期末在庫の売価を決めます。

 今回は120円と決めましょう。

 ※この売価は商品グループ単位に決められたりするようです。

 

②原価率を求めます。

 原価率=(当月仕入高+期首在庫金額)/(売上高+期末在庫売価金額)です。

 当月仕入高 =5,000+1,600 = 6,600円

 期首在庫金額=2,200円

 売上高=2,400+600 = 3,000円

 期末在庫売価金額=120 × 55=6,600

 よって原価率=8,800/9,600 = 11/12となります。

 

③原価率から在庫単価を求めます。

 在庫単価=120×(11/12) = 110円

 売上原価=3,000×(11/12)=2,750円

 期末在庫金額=110×55 = 6,050円

 

 となります。

 

最初は何をやっているのかわからないかもしれませんが、この方法のポイントは「原価率」にあります。売価を計算し、期首在庫と当月仕入在庫がすべて売れたときの原価率を算出して、売価から原価を計算している、というイメージです。

8.低価法

ここまで原価法の在庫評価方法を見てきましたが、低価法にもこれまで説明してきた評価方法が適用されます。

 

低価法とは、在庫評価によって評価した棚卸資産の評価額と時価評価額のうち、低い方を採用する方法を言います。

 

低価法の例を月次総平均で考えていきます。

【取引例】

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを30個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを50個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上 

⑤期末の時点で商品Aの時価評価単価は@100円

 

月次総平均による在庫単価は132円となります。

原価法の場合はこの単価から棚卸資産の評価額を求めますが、

低価法の場合は時価評価単価と比べて低い方を採用しますので、在庫単価は100円となります。

 

9.まとめ

 とてもざっくりとではありますが、在庫評価方法について説明させて頂きました。

はじめはなかなかとっつきにくですが、覚えようとするより慣れることが大切だと思います。

私も覚えがよくない方なので、頭から引き出して使えるようになるまで半年ぐらい掛かった記憶があります。。。(←かかりすぎ。)

私の持っている簿記3級の参考書などではさらっとしか触れられていなかったのですが、会計を理解する上では大切な知識ですので、しっかりと理解しておく方がいいと思います。

 

売上原価を求めてみよう!

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1.売上原価について

企業で働いていると所属している部署の会議で「売上原価」って言葉をよく聞くと思います。「売上原価」って言葉の通り、売上に掛かった原価のことなんですが、簿記や会計の学習をしていても「売上原価」の言葉はわかるけど、仕訳や財務諸表やら実務的なことが絡んでくると、「???」に陥りやすい経験がよくありました。そのことから今回は「売上原価」についてスポットを当てて見ていきたいと思います。

 

「売上原価 とは」とネットで検索すると

             商材の売上でかかった仕入原価

と定義されています。仕入原価とは何かというと単純に商材の仕入値のことだと思ってください。

 

売上原価の計算方法は一般的に

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で求められます。

 

期首在庫棚卸高:月初に抱えている在庫の金額です。

  当月仕入高:月中に仕入れた在庫の金額です。

期末在庫棚卸高:月末に抱えている在庫の金額です。

 

つまり、初めからあった在庫の金額に、増えた在庫の金額を足して、売れ残った在庫の金額を引けば、売れた在庫の金額が出るでしょ、という意味の式です。

 

図で表すと以下のようになります。

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式は眺めていても身に付きにくいので、次の取引例を問題にして売上原価を求めてみましょう!

 

2.売上原価を求めてみよう。

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上

 

まず期首在庫棚卸高は⓪からわかりますね。

 20個 × 110円 = 2,200円 です。

続いて当月仕入高は①③からわかって

(50個 × 100円) + (10個 × 160円) = 6,600円 です。

そして期末在庫棚卸高は売れ残った在庫が

20 + 50 - 20 + 10 - 5 = 55個 

 

そして在庫単価ですが、下記の月次総平均法を使うと

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なので、

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となり110円とわかります。

期末在庫棚卸高は

55個 × 110円 = 6050円 となります。

 

そして売上原価は

2,200円 + 6,600円 - 6050円 = 2750円 となりますね。

 

3.売上原価を求めてみよう。※運送費付

基本に+αで運送費が発生したときにどうなるか見ていきましょう。

 

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上

⑤取引①③の仕入時に800円の運送費を支払った。

 

運送費の扱いについては 

にありますように、1.在庫単価に含める場合と2.直接売上原価に計上する場合の2パターンありましたね。

 

1.在庫単価に含める場合

在庫単価は

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となりますね。

よって期末在庫棚卸高は

55個 × 120円 = 6600円 となります。

 

売上原価は

2,200円 +6600円 + 800円 - 6600円 = 3000円 となります。

 

2.在庫単価に含めない場合

運送費は全額売上原価にしますので、

 

2,200円 + 6,600円 - 3850円 + 800円 = 5750円

 

となります。

 

売上原価は先ほどの式が一般的な求める方法なのですが、実務となると他にも売上原価に含める取引が発生する可能性があるため、注意してください。

 

3.売上原価を求めてみよう。※棚卸差異付き

⓪月初、商品Aの売れ残りが20個@110円

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上

⑤棚卸の結果、商品Aが50個@110円で売れ残った

 

先の基本問題と何が違うかというと、帳簿上の期末在庫数と棚卸結果の期末在庫数が一致しない点にあります。

帳簿棚卸数(帳簿から計算できる在庫数のこと)は

20個 + 50個 - 20個 + 10個 - 5個 = 55個

 

でも⑤から実地棚卸数(棚卸業務の結果、実際に残っている在庫数のこと)は50個

 

よって5個の在庫が盗まれたか破損したか、何らかの理由でなくなっていることになります。このなくなった5個の差は「棚卸減耗損」という勘定科目を使って仕訳されます。

 

⓪期首在庫棚卸高 2,200/繰越商品 2,200

仕入      5,000/買掛金  5,000

売掛金     2,400/売上   2,400

仕入      1,600/買掛金  1,600

売掛金       600/売上    600

⑤棚卸減耗損     550/繰越商品  550

⑥繰越商品    5,500/期末在庫棚卸高 5,500

 

そしてこの棚卸減耗損をどう処理するかがポイントになります。

結論から言うと、棚卸減耗損は発生した金額や理由から、売上原価、販管費営業外損益のどれかに含められるかが決まります。

 

売上原価or販管費に含める場合:

反復的に正常な数量で発生したり、企業活動上不可避な費用と捉えられる場合。

営業外損益に含める場合:            

異常な原因で、正常数量以上で発生する場合。
※額があまりにも多い場合は特別損失に計上することもあります。

 

売上原価に含める場合は

 

2,200円 + 6,600円  + 550円 - 6050円 = 3300円

 

となります。

三分法と分記法について

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 1.仕訳の記帳方法

記帳する際、仕訳の書き方にはいくつか決まった書き方があります。

知る限り、その方法は下記の4つになります。

 

1.三分法

2.分記法

3.売上原価対立法

4.総記法

 

日商簿記3級だと大体が三分法で回答するものが多いですが、たまに分記法も出題されるようです。残りの売上原価対立法、総記法はマイナーな記帳方法なので、今回は三分法と分記法について解説していきます。

 

まずは三分法、分記法それぞれの簡単な仕訳例からご紹介していきます。

 

2.三分法

 「三分法 とは」でネット検索すると大抵次のような説明に出会うでしょう。

商品を「仕入」「売上」、そして、決算時に使用する「繰越商品」という三つに分割して記帳する方法のこと。 

 

・・・。どうでしょうか?ピンときますか?勉強し始めたばかりの頃、私はピンときませんでした。記帳方法は言葉の定義を理解するよりも実際の仕訳例を見た方がピンときやすいです。

 

では、三分法の仕訳例です。下記のような取引ケースを仕訳にしてみましょう。

 

【取引例】

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

 

【仕訳例】

仕入  5,000 / 買掛金 5,000

売掛金 2,400 / 売上  2,400

 

となります。三分法の定義通り、商品取引の仕訳を「仕入」・「売上」勘定科目を用いて記帳するのが三分法になります。たったこれだけです。

 

※「あれ?「仕入」・「売上」はあるけど「繰越商品」がないじゃないか」

と思われるかもしれませんが、順を追って説明するために今は省いています。

後ほど、「繰越商品」が出てきますのでお待ちください。

続いて分記法です。

 

 

3.分記法 

 ネットで検索すると大抵次のような説明がされています。

商品売買の仕訳を商品勘定(資産勘定)と商品販売益勘定(収益勘定)を使って記入する方法のこと 

 これもやはりピンとこないので、仕訳例を見ていきます。三分法のときと同じ取引を例にします。

 

【取引例】

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

 

【仕訳例】

①商品  5,000 / 買掛金   5,000

売掛金 2,400 / 商品    2,000

          / 商品売却益    400

 

となります。分記法の定義通り、商品取引の仕訳を「商品」・「商品売却益」勘定科目を用いて記帳するのが分記法になります。

 

4.三分法と分記法 

先ほどの仕訳例を並べてみましょう。

 

(三分法)             (分記法)

仕入  5,000 / 買掛金 5,000  ①商品  5,000 / 買掛金   5,000

売掛金 2,400 / 売上  2,400  ②売掛金 2,400 / 商品    2,000

                             / 商品売却益    400

 

使われている勘定科目が違うことは一目瞭然。でもそれだけではなくて、それぞれの記帳方法にはメリット・デメリットがあります。上記仕訳を見ただけでそれが理解できますか?

勉強し始めの頃、私は、使用される勘定科目が違うという理解に留まっていました。しかし記帳方法において大切なのはそれぞれのメリット・デメリットまで理解することなのです。

 

続けますと、三分法と分記法のメリット・デメリットを一言で言うと、

          「売上原価」が判明するタイミング

になります。

 

まず分記法ですが、

 

①商品  5,000 / 買掛金   5,000

売掛金 2,400 / 商品    2,000

          / 商品売却益    400

 

見るだけでわかりますね。「商品 2,000」が売上原価を表しています。

一方で三分法では

 

仕入  5,000 / 買掛金 5,000

売掛金 2,400 / 売上  2,400

 

商品の売上に対していくら仕入した商品を消費したのかがわかりませんね。

三分法は月末にならないと売上原価がわからない記帳方法なのです。

では、次の取引内容を見ていきましょう。

 

【取引例】

(月中)
①商品Aを50個@100円で仕入         
②商品Aを20個@120円で売上        
(月末)
③棚卸の結果、商品Aが30個@100残った   

 

【仕訳例】

(月中)

仕入   5,000/買掛金     5,000

売掛金  2,400/売上      2,400

(月末)

③繰越商品    3,000/期末商品棚卸高 3,000

 

先ほどと違い、③の仕訳が追加されています。

期末商品棚卸高とは月末時点の在庫評価金額になります。

【取引例】③から 30×100=3,000と計算されています。

 

売上原価は前月末商品棚卸高+当月仕入高ー期末商品棚卸高で求められるので、

 

0 + 5,000 - 3,000 = 2,000 となります。

 

5.企業で採用されている記帳方法 

 三分法と分記法の違いは売上原価のわかるタイミングだとお伝えしました。

三分法は月末、分記法は売上のタイミングで売上原価が判明します。

売上する度に粗利(商品売却益)がわかる分記法の方が企業にとってメリットがあるように思いますが、実際多くの企業では三分法が採用されています。

 

それはなぜでしょうか?

 

次の取引例を考えてみましょう。

 

【取引例】

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上

 

分記法で仕訳をすると

 

①商品   5,000/買掛金   5,000

売掛金  2,400/商品    2,000

           商品売買益 400

③商品  1,600/買掛金    1,600

売掛金    600/商品     ?

          商品売買益  ?

 

さて、「?」はいくらになるでしょうか?これは在庫評価方法によって変わります。

今回は「移動平均法」で求めてみましょう。

移動平均法は商品の受入(仕入)をするたびに在庫単価を求める評価方法になります。

 

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よって、①③の取引ごとに在庫単価を求めることになります。

※期首在庫数は0個とします。

 

① 

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 よって①の取引時の在庫単価は100円となります。

 

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 よって③の取引時の在庫単価は110円となります。

 

よって「?」は

①商品   5,000/買掛金   5,000

売掛金  2,400/商品    2,000

           商品売買益 400

③商品  1,600/買掛金    1,600

売掛金    600/商品     550

          商品売買益    50

 

となります。

 

多くの企業で三分法が採用されている理由がわかりましたでしょうか?

分記法では売上の都度売上原価を計算する必要があるため、記帳にものすごく手間がかかるのです。

 

一方三分法だと、売上原価は月末の在庫評価の1回で算出できるため、お手軽なのです。

【取引例】

①商品Aを50個@100円で仕入

②商品Aを20個@120円で売上

③商品Aを10個@160円で仕入

④商品Aを5個@120円で売上

 

三分法で仕訳をすると

 

仕入   5,000/買掛金   5,000 

売掛金  2,400/売上    2,400

仕入   1,600/買掛金   1,600

売掛金   600/売上    600

⑤繰越商品   ?/期末商品棚卸高?

 

月次総平均法で在庫評価すると、期首在庫を0として計算すると

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在庫単価は110円となります。

売れ残りは35個なので、「?」は 35個 × 110円 = 3,850円。

 

よって売上原価は 5,000 + 1,600 - 3,850 =  2,750円となります。

 

いかがでしょうか。三分法の法が計算の手間が少なく効率的に求められますね。

今回の例は取引件数が少ないため、分記法でも対応できますが、実務となるとたくさんの取引が発生し、その都度在庫評価を行うのは現実的ではありません。

 

そのため多くの企業では三分法が採用されているのです。